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【災害避難対策の新常識】深部静脈血栓症と予防法に迫る!

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今回は、いろいろな知識が混同してしまっている「深部静脈血栓症」(エコノミークラス症候群)について、詳しく解説をします。

 

目次

1, そもそも深部静脈血栓症とは?

皆さんは、「深部静脈血栓症」という言葉をご存知でしょうか。

長時間、足を動かさずに同じ姿勢でいると、足の深部にある静脈に血の塊(これを深部静脈血栓と呼びます)ができ、この血の塊の一部が血流に乗って、肺に流れて肺の血管を閉塞してしまう(肺塞栓)危険があります。
これを深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓症といいます。


1-1, 
エコノミークラス症候群

1980年代頃からメディアでもよく耳にすることが多い「エコノミークラス症候群」。

これまで健康だった人が突然死に陥る病として取り上げられ、一時期、話題となりました。実は、いわゆるエコノミークラス症候群とは、深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓症のことなのです。

飛行機で長時間旅行したあと、飛行機を降りて歩き始めたとたん、急に呼吸困難やショックを起こし、ときには亡くなることもある-。これが「エコノミークラス症候群」と呼ばれる病気の典型的なケースです。

長時間狭い椅子に座ったままの状態を強いられることが多く、足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血の塊(静脈血栓)ができることがあります。この静脈血栓は歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し、肺の動脈を閉塞してしまいます。これがエコノミークラス症候群です。

この病気は、発症率は100 万人に 0.4 人位とも報告されており、車の長距離運転手などにも発症することが知られてきましたので、「旅行者血栓症」とも呼ばれています。

1-2, 深部静脈血栓症(DVT) /肺塞栓症

深部静脈血栓症は、深部静脈というより深いところにある静脈に血栓ができる病気です。

ふくらはぎの静脈に最初はできることが多いようですが、膝裏の深部静脈に血栓ができたり、太ももの付け根に血栓ができたりすることもあります。

この場合は肺などへ飛んでいく可能性が高くなってきます。(肺塞栓症と呼ばれます。)そのため、急性の場合は緊急的に検査や治療が必要となります。

ちなみに、日本の急性心筋梗塞の発症率は、年間に10万人あたり30~40人とされています。一方、急性肺血栓塞栓症の患者さんの数は、日本ではこれまで非常に少ないと考えられてきたそうです。

ところが、最近の調査では、急性肺血栓塞栓症と診断された人の数は近年、急に増加しており、発症者数は年間に10万人あたり約3人程度と報告もあります。

この数は急性心筋梗塞症と比較すると少数ですが、大動脈瘤/大動脈解離と同程度で、決して、少ない数字ではありませんよね。

これが最近、急性肺血栓塞栓症が注目されてきた理由の一つです。

注目され始めた二つ目の理由としては、この病気が、他の病気の治療目的でいろいろな薬を投与した際や、手術や検査などを行った後に、予期せず合併し、しかも一度発症するとその死亡率が高いことが知られてきたからだそうです。

急性肺血栓塞栓症は他の病気と同様に自然に発病する例も多いのですが、何らかの医療行為が原因で発病する、いわゆる「医原性」と呼ばれる場合もあるのです。

しかし、これは逆に適切な予防をすれば、100%ではありませんが病気の発症を防ぐ可能性があるということでもあります。

ここでは、深部静脈血栓症の知識をしっかりと踏まえた上で、どのような状況で起きてしまうのか、今からできる対策についても触れていきます。

医者

 

2, どのような症状が起こるのか?

それでは具体的な症状について見ていきましょう。

2-1, 深部静脈血栓症の主な症状

深部静脈血栓症の症状は、下肢の腫れや痛み、下肢の発赤、浮腫、表面の静脈の拡張などが挙げられます。

このような症状があった場合には、深部静脈血栓症を発症している可能性が高いため、すぐに静脈の専門の医療機関に相談してください。

ただし、この病気は、足が急に腫れて痛みが出る症状で見つかることが多いのですが、血栓の場所によっては無症状の場合もあるそうです。

 

2-2, 肺塞栓症の主な症状

・呼吸が苦しい

・冷や汗が出る

・動悸がする

・失神する

・熱が出る

・胸が痛い

肺塞栓症は肺に運ばれた血栓が肺の血管(肺動脈)をつまらせるため、ひとたび発症すると、命に関わることもある危険な病気と言われています。

このような症状が気になる方は、すぐに専門クリニックへの受診をお勧めいたします。

3, なりやすい環境について

深部静脈血栓症の発症には、

・血のめぐりが悪くなる。

・血管の壁に傷がついたり、炎症を起こしたりする。

・血が固まりやすくなる
という3 つの要因が関与していると考えられています。

一番、発症しやすい環境は、一言で言うと、「長時間同じ(特に車中等での窮屈な)姿勢でいること」です。

例えば、飛行機や夜行バスでの移動、長時間の立ち仕事、デスクワーク、さらに言えば、妊婦の方も注意が必要です。

さらに、これらのリスクが多ければ多いほど、深部静脈血栓症は起こりやすくなりやすいと言われています。

また、深部静脈血栓症は、大きな手術のあとに併発する病気としても注目されています。

これは、手術による傷や入院中のベッド生活などによって血栓ができやすくなるためと考えられています。

例えば、手術後、初めてベッドから立ち上がって歩いたときや、トイレのときなどに起こりやすいと言われているそうです。

これは長い間横になっていた状態から急に起き上がって歩くことで足の血のめぐりが良くなり、血栓が移動しやすくなるためです。

したがって、このようなときに急な胸の痛みや息苦しさ、冷や汗、発熱などを感じた場合にはすぐに専門の医者に相談をしてください。

 

4, 予防方法とは?

深部静脈血栓症は、診断が難しい病気であり、また肺血栓塞栓症を起こした場合には、命に関わることも少なくない、とも言われています。

深部静脈血栓症にならないためには、「血のめぐりが悪くなる」、「血管の壁に傷がついたり、炎症を起こしたりする」、「血が固まりやすくなる」など、これらの要因を防ぐ必要がありますが、手術や入院が必要になった場合には、これらのリスクを完全に回避することはできません。そこで、深部静脈血栓症に対しては、これらのリスクをできるだけ減らすよう「予防」することがもっとも重要になります。

これらのリスクを減らすために、長期に窮屈な場所で同じ姿勢を続けないといけない場合は、以下の予防法を心がけてください。

・足の上げ下げや、足の指を上下、一周など、こまめに動かしましょう。

・かかとの上下運動(20-30回程度)をしましょう。

・入院中でも日中に30分に1回は歩きましょう。

・適度な水分を取りましょう。

・時々深呼吸をしましょう。

・入院中で寝たきりの場合やこれらのマッサージを頻繁に行えない仕事中などは、医療用の弾性ストッキングを着用しましょう。

 

また、これらの予防法が難しい寝たきりの方や麻痺の方は、以下のようなマッサージも効果的です。

詳しくは、<日常にも潜む危機!エコノミークラス症候群の予防法3選>こちらをご覧下さい。

5, 自然災害大国日本が直視すべき予防策

日本は非常に災害が多い国です。

今後も大きな地震などが予測されている中で私たちが考えねばならない対策もあります。

 

5-1, 東日本大震災で浮き上がった災害問題

世界中を震撼させた東日本大震災では,19,000名を超えた犠牲者の90%超が巨大津波により亡くなったと考えられています。

しかし,発災後に避難先や仮設住宅等で亡くなった震災関連死も、判明しているだけで10都県の1,632名に上っており,その原因については,復興庁を中心に調査が進められているという驚くべき事実があります。

震災関連の死亡原因として深部静脈血栓症や肺塞栓症が初めてクローズアップされたのは,平成16年に起こった新潟県中越地震(中越地震)であると言われています。

新潟県の発表によれば、中越地震における圧死は16名であったが,震災関連死は52名に上っているそうです。

また,諸報告から少なくとも11名がこれらの血栓症を発症し、そのうち4名が亡くなったことが判明しているそうです。

5-2, 自治体ができる災害対策

上記のような、災害時に、「防ぎ得た死」とも言えるのが、これらの血栓症です。

専門のクリニックでは、日頃からひざまでの弾性ストッキングを着用することをお勧めしているのですが、個人での備蓄だけではなく、近年では、自治体自体がこれらのストッキングを数千足〜備蓄することも多くなってきました。

またこういったストッキングですが、足の血流をよくするために履くもので、通常のストッキングに比べて足の締め付けが強く、効果は抜群です。

足を締め付けると血流が悪くなる、ということはなく、立っている時の方が、足の静脈は流れが悪く、動脈の流れも悪くなってしまいます。

弾性ストッキングは締め付けることで、ふくらはぎに貯まっている血液を絞り出して血流をよくする効果がありますので、ご活用ください。

 

6, 検査と治療について

深部静脈血栓症が疑われた場合、まず足のエコー検査を行います。エコーでは、まず太ももの付け根の深部静脈や膝裏の深部静脈、下腿の深部静脈の枝などに血栓がないかどうかをチェックします。

足が腫れていることが多いので、肥満などがあると、必ずしも簡単に血栓を見ることができるとは限りません。またCTやMRI検査、静脈造影などの検査も血栓の場所を特定するために行うことがあるそうです。

 

深部静脈が疑われた場合、血液検査を行うと血栓があるがどうかの検査ができます。

高齢者や他の疾患でも上昇する場合がありますので、やはり正しい診断を受けるためには静脈の専門クリニックへの受診をお勧めいたします。

7, まとめ

いかがでしたか。

普段聞き慣れない、「深部静脈血栓症」。この病気の恐ろしさと実は身近に起こりうる病気であるということをご認識いただけましたでしょうか。

日頃からできる予防策から、震災予防策まで、ぜひ、いざという事態が起きてしまう前に・・・今からできる方法を実践していきましょう。

 

 

 

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