目次
血栓症は身近なところで起こりますが、命に関わるとても重要な病気です。
本記事では血栓症がどうして起こるのか、血栓症が起きないようにするための予防法をお伝えしていきたいと思います。
1, 血栓症とは
血栓とは血管の中にできる血のかたまりのことです。
もし、血栓が血管をふさいでしまうと、血栓の先には血液が流れなくなり、細胞への酸素や栄養分の供給がストップしてしまいます。
その結果、細胞組織は壊死してしまいます。
もしこれが、心臓の血管に起これば心筋梗塞、脳の血管に起これば脳梗塞となります。日本人の死因は、第1位がガン、第2位が心筋梗塞、第3位が脳卒中であることはよく知られていますが、
心筋梗塞と脳卒中はどちらも血栓ができることで「血栓症」になる共通の病気です。
1-1, 血栓症の種類
血栓症の種類を紹介させていただきます。
1-1-1, 静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症)
静脈は体の各部から二酸化炭素や老廃物を含んで、肺へ運ぶ役割があります。
静脈の深部で発生した血栓が血管内を移動して肺に到達し、肺の小さな血管に血栓が詰まる病気を肺血栓塞栓症と言います。
エコノミークラス症候群という言葉を耳にしたこがある方も多いかと思います。
飛行機やバスなどで長時間同じ姿勢で座っていて血流が悪くなることが原因となり起こるエコノミークラス症候群は、代表的な静脈血栓塞栓症です。
1-1-2, 血栓性静脈炎
深部静脈血栓症に対し、身体の表面の静脈(表在静脈)に起こった炎症を血栓性静脈炎といい、炎症が先におき次に血栓が生じます。
血栓性静脈炎は産後に起こりやすく、妊娠出産による血液凝固能の亢進や血管の圧迫、損傷が原因となります。
1-1-3, 動脈血栓症
心臓や動脈系にできた血栓が動脈を流れ、心臓の冠動脈や脳動脈、腎動脈、腸管動脈、下肢動脈などを詰まらせる病気の総称です。
心筋梗塞や脳梗塞、腎梗塞、上腸間膜動脈血栓症(腸管壊死)など、重篤な病気が多く、静脈血栓に比べて急激に発症するという恐ろしい特徴があります。
1-2, 原因
血のかたまりである血栓が生じ、血栓が詰まることで血栓症になるということをお伝えしてきましたが、具体的にどんなことが原因で血栓ができてしまうのか、原因を解説していきます。
1-2-1, 血流障害
血液の流れは血管の弾力性、心臓の働きなどの影響をうけます。
血栓が小さく、軽症の場合は病院で血栓を溶かす処置を受けますが、重症の場合はその場ですぐに心停止に至り、AEDを使用して心肺蘇生を行っても、それだけの処置では詰まった血栓を取り除くことはできませんので、回復は難しいです。そのため、予防が非常に大切になります。
血管が硬くなり弾力を失うことで、血流が悪くなってしまい、血流が悪くなることで血栓が生じるリスクが高まります。
動脈硬化は老化現象として誰にでも起こるものですが、糖尿病や高血圧、肥満があると動脈硬化のリスクを高めてしまいます。
1-2-2, 長時間同じ体勢でいる
飛行機やバスなど動きにくい場所で長時間座ったままでいると、血管が圧迫され足の静脈に血栓ができやすくなり、更に脱水や気圧の変化があると血液濃度が濃くなり、血栓が生じるリスクが高まります。
1-2-3, 血管が傷つく
血管内皮が傷つくと、そこからの出血を食い止めるために血小板や凝固因子などが集まり血栓を形成してしまいます。
骨折や手術で血管が傷ついてしまう場合もありますし、動脈硬化や糖尿病、高血圧、喫煙などは血管が傷つきやすい状態を作っていますので、注意が必要です。
2, 血栓症が起こってしまったら
もし、血栓症になってしまった際、どのような症状が起きるのか、
またその際どのようにしたらいいのかをお伝えしていきます。
2-1, 症状
片足が急に痛くなったり、はれたりするときは、深部脈血栓症の可能性があり、肺塞栓症の原因となりますので注意が必要です
しゃべりづらい、手足がしびれるなどの症状は脳梗塞の危険があります、胸の痛みや息が苦しいなどの症状がみられた際は心筋梗塞や肺塞栓症の可能性があります。
2-2, 検査
血栓症は突然起こるので、何か症状がある際は医療機関で診断を行ってもらいましょう。
血栓症の疑いがある場合は、すぐにCTやMRI、心電図などの検査を行う必要があります。深部静脈血栓症の症状がみられた場合は、足の静脈エコー(超音波検査)や胸部から足までの全身CTなどが行われます。
2-3, 治療
治療には、血栓を溶かす薬や血液をかたまりにくくする薬が使われています。
薬での治療が行えない、重度の場合は血栓を取り除くための手術が行われることもあります。
>エコノミークラス症候群の治療法について、詳しくはこちら<
3, 血栓症にならない為日常生活での予防方法
日常生活で行える血栓症の予防方法を紹介させていただきます。
3-1, 生活習慣病の改善
生活習慣病には、高血圧、脂質異常症、糖尿病などがあります。
これらはすべて自覚症状がほとんどありませんが、気づかないうちに進行し、脳や心臓、血管などにダメージを与えていきます。ですので、血栓を作らない為には生活習慣病を改善していくことが大切です。
3-1-1, 運動
運動を行うことで血圧値・血糖値が下がり、善玉のHDLコレステロールが増えます。骨粗しょう症の予防や、ストレス解消にもつながり、良質な睡眠をとることができます。
長距離を走ったり、スポーツジムで鍛えたリスるということではなくても、1日20分程度のウォーキングを毎日行うことでも運動になるので、
自宅から最寄りの駅まで歩く、エスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活で無理なく行える運動を行っていきましょう。
3-1-2, 食事
健康的な食事が、体重や血圧値、血糖値、コレステロール値を改善します。
低カロリーであれば良いと思い込んでいる方もいると思いますが、カロリーのことだけを考えるのではなく必要な栄養素はしっかりととることが大切です。
1日3食をしっかりと食べること、野菜や果物、魚、大豆など豆類を増やし、増やすことを意識しましょう。
ごはんやパンなどの炭水化物は玄米や全粒粉を選べば、食物繊維の摂取量を増やせ、体重コントロールにも役立ちます。
塩分は1日3gに抑えるのが理想的ですが、無理な場合は6g以下を目指し、糖分の多い清涼飲料や缶コーヒーを飲むときは、週に400kcalを目安にしましょう。
3-1-3, 体重維持
脂肪が一定以上に多くなり、心臓の負担が増えている状態が肥満で、肥満に脂質異常や、高血圧、高血糖などが重なると、心臓の負担はさらに増えます。
体重を落としただけでも、これらの検査値は改善していきます。
1日の食事で必要なカロリーを確かめて、それを超えて食べ過ぎないよう摂取カロリーをコントロールすることと、有酸素運動を行えば体重を減らすことができます。
3-2, 禁煙
タバコには有害物質が多数含まれていることはご存知ですよね。
タバコに含まれるニコチンには血管を細くしてしまいます。血管が細くなると血流が悪くなり血栓が生じる原因となるので、血管の為に禁煙を行いましょう。
4, 長時間同じ体勢でいる時の予防方法
飛行機などの長時間座ったままの場所で行える予防方法のご紹介です。
狭い場所で長時間同じ体勢でいることは、下肢の静脈の血流が滞る危険性が高いです。これから紹介させていただく内容はエコノミークラス症候群の予防にもなります。
エコノミークラス症候群は、飛行機以外にも被災地の避難所でも起こる場合があるので、備えておきたい内容ですね。
4-1, 水分補給
喉が渇いてから飲み物を飲むのではなく、こまめな水分補給を心がけましょう。
水やスポーツドリンクがおすすめです。
水分補給は大切ですが、カフェインやアルコールですと利尿作用があるので逆効果になってしまうので、注意が必要です。
4-2, 軽い運動
立ち上がってトイレまで歩いたり、屈伸運動をすることをおすすめします。
もし座ったまま動けないような状況の場合は、足首をゆっくりとまわしたり、足指でじゃんけんをするように指を動かして「グー、チョキ、パー」を作りましょう。
4-3, 足のマッサージ
ふくらはぎをマッサージしましょう。
足首から上に向かって血流を流す感じで行い、力の加減は痛気持ちがいいくらいがいいでしょう。
4-4, ゆったりした服装を選ぶ
血液の流れを悪くしてしまいそうな締め付け感のある服装は避け、ゆったりとした服装を着用しましょう。
ネクタイを緩めたり、靴を脱いだりすることもおすすめです。
機内に簡易的なスリッパを持参することもいいでしょう。
4-5, 弾性ストッキングの着用
弾性ストッキングはふくらはぎの筋ポンプの働きを助ける働きを行ってくれます。
狭い場所で同じ姿勢をとっていると、本来心臓に戻るはずの血液がふくらはぎに滞って血栓が生じるリスクが高まります。そのような状態で、血流をサポートしてくれるのが弾性ソックスです。
立ち仕事などのむくみ改善に使用している方も多いかと思いますが、血栓症を予防する際は医療用の弾性ストキングをおすすめします。
市販商品よりも、段階的な着圧、圧が強いことでより効果的です。
座ったままの姿勢で長時間過ごすのは、飛行機やバスだけではなく災害時の避難所ということもあります。
熊本地震の際は避難所でのエコノミークラス症候群予防として、弾性ストッキングが配布されました。
「JETLEGS」の弾性ストキングは医療用ですので市販の商品に比べ、着圧が強く、耐久性に優れています。とてもコンパクトなので、災害時の常備品や飛行機での移動の際の持ち運びにもおすすめです。
5, まとめ
血栓症は命に関わる病気でしたが日常生活で予防や改善を行っていくことができます。
簡単なことで予防ができるので、日常生活から心がけ、サラサラな血管を保てるようにしましょう。