ページトップ

日本の医師たちが驚く最先端治療を手掛けてきた
心臓血管外科医が監修するメディア

車中泊は要注意!エコノミークラス症候群による死亡リスクとは?

Pocket
LINEで送る

2016年4月、熊本で起こった熊本地震から1年以上が経過しました。

2017年現在で、熊本地震での死者数は204名を超えると発表されました。
この204人のうち、家屋の下敷きになるなどして亡くなられた直接死が50人で、それ以外の方は地震の後の避難時や、自宅に戻られた後に死亡した「災害関連死」とされています。

災害関連死、とはどのようなケースがあるのでしょうか?
地震後の死亡原因を見てみると、「エコノミークラス症候群」をメインに車中泊後に亡くなった人が少なくとも33人もいらっしゃるという恐ろしい報道がありました。

 

この記事では、このような恐ろしい事例があるエコノミークラス症候群と車中泊についての関係性と対策について、紹介します。

 

目次

1.エコノミークラス症候群と車中泊

日本全国、今や誰の身にも起こりうると言える震災と、避難生活。
避難生活を経験したことが無い方は、避難所と言えば地域の小学校などの教育機関や仮設住宅などを想定される方も多いかもしれません。

一方で、皆さんは、ニュース映像等で、避難所の学校の駐車場などでずらりと並んだ車と出入りする人々の様子を見られた記憶がある方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。

その映像は、まさしく、急遽発生する震災の中で、
自治体が事前に対策を講じていたとしても、様々な理由から車中泊を強いられている人が
多くいらっしゃることを意味しています。

 

2. 車中泊中にエコノミークラス症候群が起きやすくなる原因とは?

そもそも車の中、というのは、キャンピングカーなどの特別車ではない限り、休憩をしたり、宿泊をするような環境を想定されて造られてはいません
しかし、災害時や長距離移動での休憩時など、車中泊を強いられるケースも少なくは無いでしょう。
ここでは、車中泊中のエコノミークラス発症の原因を挙げていきます。

 

2-1.エコノミークラスの原因

このエコノミークラス症候群ですが、別名を「急性肺血栓塞栓症」ともいい、長時間同じ姿勢を続けていることで、手足がうっ血してきたり、血の塊ができてしまいます。

この血液の塊が心臓まで運ばれていき、肺の血管を詰まらせてしまうことになります。
エコノミークラス症候群の怖いところは、肺の血管だけでなく心臓や脳の血管にも血液の塊が運ばれてしまい、細い血管をつまらせてしまうことがあるのです。
そのため、最悪の場合、死に至るという大変怖い病気であるという点です。

 

2-2.車内はそもそもエコノミークラス症候群が起こりやすい

前述の通り、そもそもですが、車の中というのは長時間の休憩や睡眠を想定して造られてはいません。

狭い車内での長期に及ぶ避難生活。避難所での他人との生活と比較して、
マイカーの中での生活ですから、プライバシーは保てるし、ペットも一緒にいられるなど、メリットも数々あるように思われます。
その一方で、 足をゆったりと伸ばすことができないままの寝泊まりが続き、長時間同じ姿勢でいると、
血液の循環が遅くなります。

車の椅子をそのまま利用しますから、リクライニングを倒しても、凹凸があるので寝返りにも限界がありますよね。

また、外気温の影響が大きいこともエコノミークラス症候群が起きやすい原因の一つと言えます。
エコノミークラス症候群は、体内の水分不足などで血液がドロドロと滞留してしまうことでも血栓ができ、発症しやすくなってしまいます。
普通乗用車の場合、真夏の駐車車両の車内を思い出していただけるとお分かりの通り、
エアコンをかけようにも、乗用車の場合はエンジンをかけないとカーエアコンは動きません。
特に緊急の災害避難時など、燃料にも限界はありますし、周囲への配慮もあるでしょう。
車内温度の上昇で汗をかき、脱水症状を引き起こす危険性があるということは、エコノミークラス症候群も起きやすい環境であると言えるのです。

3. 車中泊を強いられるケースとは?

それでは何故、様々な避難生活場所の中でも、車内を選択する方が多いのでしょうか。
避難生活中に車中泊を続ける理由について、最も多いといえるのが「他人との共同生活によるストレス」と「屋内の恐怖」です。

家屋の揺れや倒壊を経験しただけでなく、
さらに余震が続くケースでは、車内の方が揺れが小さく感じたり、
避難所などの屋内に居続けることへの不安が大きくなるため、車内に逃げ込む方も多いと言えるでしょう。

また、そもそも震災が発生した際、自治体が事前に想定していた避難所への誘導をしたとしても、
余震の影響等で想定より避難生活者が増加し、どこの避難所も満杯状態になってしまうということが、残念ながら多くの震災で起こっています。

上記のような、自治体指定の避難所に入りきれない場合は、公共施設・避難所の駐車場に駐めた車の中での寝泊まりを余儀なくされたため方も多いと言います。

また、避難所はあるが震災により避難施設の窓が割れて損壊していた、
もしくは天井の一部が壊れ雨漏りがしているという場合、家族と共にその建物内へ逃げ込むのが怖くなり、車内へ逃げ込むというのも、想像できます。

こう言った避難所不足以外にも、プライバシーのない避難所のストレスを挙げる人、
幼い子どもやペットがいるために避難所の利用を遠慮している人、また、
避難中に体調が悪化したと訴え、車内にこもる人も多いそうです。

こういった理由から、被災地では車中泊が増加し、車中泊中に亡くなる人が相次いでいるため、
早急な対策が求められているのです。

4.車中泊時の予防策7選

これまで車中泊とエコノミークラス症候群の関係性と車中泊のシチュエーションを挙げてきました。
では、いざ車中泊を強いられた場合にできる対策にはどのようなことがあるのでしょうか?
簡単にできる7つの対策を紹介しますので、ぜひ覚えておいてください。

4-1.できる限り車内から出て歩く

少なくとも4~5時間に一度、車外に出て散歩をするようにしましょう。
また、もし車中で座ったままであったとしても、下肢の屈伸運動をすることも効果的です。

 

4-2.車中で血流を促進する呼吸法

見落としがちな対策ですが、実は呼吸法一つでも対策ができます。
腹式呼吸は横隔膜全体を動かす呼吸になるため、体内の血流促進にもつながります。

車中で座ったままであっても、かかとやつま先の上下運動に合わせて、腹式深呼吸を行いましょう。
間隔としては、1時間ごとに3~5分行うのが望ましいとされています。


3.水分を摂る

原因の項目で挙げたように、血液中の水分不足もエコノミークラス症候群の発症リスクを高めてしまいます。
こまめな水分補給が重要ですが、この際にはコーヒーや炭酸飲料、アルコールは避け、
ミネラルウォーターか薄いお茶が望ましいと言えます。

4.ゆったりした服装を

体を締め付けて血流を妨げるような服装は避けましょう。
男性は、ベルトをゆるめたり、女性は、下着をゆるめ、ゆったりとした衣類を着用するように心がけましょう。

5.血行を悪くするので、足は組まない

こちらも同じく血流を悪くする動作ですが、ついつい癖で足を組んでしまう方は要注意です!
意識して、足は極力伸ばすようにし、また、ゆったりとしたスペースを取るために、座席は極力後ろまで下げるように心がけましょう。

 

6.寝酒を控え、睡眠薬は使用しない

 

これも要注意ですが、お酒を飲んだ後や睡眠薬服用後の睡眠は、意識が低下し、不自然な姿勢で寝てしまうため、同じ姿勢で長時間過ごす原因となってしまいます。
ストレスで寝づらいような環境でも極力こういったシチュエーションは避けましょう。

7.医療用弾性ソックスについて

可能であれば、車中泊を強いられる前に弾性ソックスを準備しておくことがオススメです。
血栓予防には血流を良くすることが重要ですが、この靴下は、ふくらはぎに圧をかけることにより、深部静脈の血流速度が増加します。

自治体での備蓄や医療機関による無料配布もあるかもしれませんが、
多くても数千足の手配である可能性が高く、熊本地震のような数万人単位での避難生活者が出てしまう場合は、必ずしも十分な数のストッキングがあるとは限りません。

可能であれば車内にご家族の人数分、あらかじめ備蓄をしておくことが万全の対策と言えるでしょう。

>弾性ストッキングのおすすめ一覧はこちら<

5.まとめ

事前に知っていなければ、死亡リスクもある車中泊群。
もし、可能であればこのようなシチュエーションを強いられるその前に……。
日頃から、ご自身はもちろん、企業や各ご家庭でも、出来うる対策を考えてみましょう。

 

Pocket
LINEで送る

関連する記事

エコノミークラス症候群の初期症状はしびれ?!

エコノミークラス症候群の初期症状はしびれ?!

20,762ビュー

簡単に行える血栓症の予防策9選!

簡単に行える血栓症の予防策9選!

12,031ビュー

こんな症状は要注意!?エコノミークラス症候群の症状と特徴

こんな症状は要注意!?エコノミークラス症候群の症状と特徴

9,209ビュー

エコノミークラス症候群を発見する検査方法5つ!

エコノミークラス症候群を発見する検査方法5つ!

5,621ビュー

エコノミークラス症候群対策!何故、弾性ストッキングがおススメなのか?

エコノミークラス症候群対策!何故、弾性ストッキングがおススメなのか?

3,802ビュー

このサイトについて

mukumi.jp (以下「当サイト」という。)は、株式会社医学新聞社 医療情報部(以下、「当部」という。)によって監修、管理、運営しております。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

詳しくはこちら