たくさんの症状や種類のある下肢静脈瘤。
何よりも大切なのはあなたの症状と要望に合った治療法、手術方法を正しく選択することです。
手術の種類から自宅でできるケアの方法まで詳しく解説をしていきます。
下肢静脈瘤治療の専門クリニックに取材をし、症状にあった治療方法と、それぞれのメリットデメリットを聞いてきました。
目次
1, 下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは脚(足)にボコボコとした膨らみができる病気のことです。心臓から動脈を通って足先へ送られた血液は、静脈を通って心臓に戻ります。その時に重力に逆らい上に上がろうとする血液を支える「静脈弁」がうまく閉じることができずに血液が下に落ちていくことから始まります。落ちる血液と上に向かっていく血液がぶつかるために血液が滞留し、それが静脈の壁に強く当たり壁がコブのように膨張します。それが下肢部のむくみとして現れる病気です。
2, 4種類の下肢静脈瘤
下肢静脈瘤と言っても、表面にわかりやすく現れるものもあれば、発見が難しいものもあります。
大きく分けると4種類の下肢静脈瘤があり、皮膚からの深さ、どこの静脈か、症状の進行度合いによって、「クモの巣静脈瘤」、「網目静脈瘤」、「側枝静脈瘤」、「伏在静脈瘤」にタイプが分けられます。
4章で詳しく解説をしますが、この種類によって選ばれる治療法、手術方法が異なるので、まずは症状を把握することが大切です。
2-1, クモの巣静脈瘤
クモの巣のように細く血管が浮き出ることが特徴です。
皮膚から一番浅い部分の真皮層の部分にでき、むくみの症状は出ず、基本的には健康被害もありません。
治療の必要はありませんが、皮膚に血管が浮き出るため美容を損なうという観点から、治療を希望される方もいらっしゃいます。
2-2, 網目静脈瘤
クモの巣静脈瘤と同じく、こちらも皮膚から浅いところにできます。
むくみの症状は出ず、基本的には健康被害もありません。網目のように血管が浮き出ることが特徴です。治療をする場合には、健康被害を改善するため、というよりは美容面に配慮しての治療となるケースが一般的です。
2-3, 側枝静脈瘤
前述の2つと異なり、皮膚から深いところにある「側枝静脈」に瘤ができる状態です。ボコボコと大きなコブができるのが特徴です。むくみの症状があり、健康被害も発生するので、治療の対象となります。
2-4, 伏在静脈瘤
こちらも皮膚から深いところにある「伏在静脈」に瘤ができる状態です。
大きなコブとなるむくみがみられます。むくみの症状があり、健康被害も発生するので、治療の対象となります。
3, 自分でもできる予防方法、改善方法
治療、手術方法の前に、まずは自分でもできる予防方法や改善方法を学習しましょう。
この方法はあくまで、軽症の場合や予備軍に効果のある方法です。前章の静脈瘤の種類を確認して、健康被害がある場合には必ず病院で診察を受けるようにしてください。
3-1, 足を心臓よりも高くする(重力利用法)
足を心臓よりも高く上げることで、重力に逆らわずに血流を心臓に戻すことができるため血液の滞留が緩和されます。
3-2, 足の筋肉運動を利用する(ポンプ法)
足の甲や足首の筋肉を動かすことで骨格筋が静脈を適切に圧迫し、血流を促進します。
3-3, 弾性ストッキングを履く
弾性ストッキングの着圧により、筋肉を締め付け、それにより血流を促進します。医療用弾性ストッキングは足首の締め付けが一番強く、上に行くに従って徐々に着圧が弱くなるため血流を上に押し上げる効果があります。
医療用から一般用までいろいろな種類がありますので、あなたにあった商品を選ぶ参考にしてください。<医療用から一般用まで!おすすめ弾性ストッキング12選!>
具体的なエクササイズや、どんな弾性ストッキングを選んだらいいのかはこちらに詳しくまとめています。<【医師監修】下肢静脈瘤の予防と改善はこの4つで決まり! >
4, 下肢静脈瘤の治療、手術方法の種類
下肢静脈瘤の治療法、手術方法は大きく分けて4種類です。
それぞれにメリット、デメリットがあり、費用や手術時間なども大きく異なります。代表的な治療法、手術方法を細かく解説していきます。
4-1, 硬化療法
硬化療法とは手術というよりは、注射を用いた治療の方法です。
注射によって硬化剤を直接静脈の中に注入し、内部をのりのようにくっつけてつぶします。その血管には血液が流れなくなり、もちろん血液の滞留もなくなるので、症状が改善します。細い針を使うので傷はほとんどわからないのですが、複数回の治療が必要なケースが多く、また炎症後の色素沈着や再発を起こしやすいので、医療機関からの説明をよく受けるようにしてください。
- 硬化療法のメリット
・傷がほとんど残らない。
・身体の負担も非常に少ない。
- 硬化療法のデメリット
・クモの巣状静脈瘤など比較的細い静脈瘤が対象となるため、重症のケースには適用ができない。
・複数回の治療が必要なケースが多い。
4-1-1, 硬化療法の治療費用や詳細
- 治療費用:約5,000円(3割負担の自己負担額)
- 麻酔は局所麻酔
- 日帰り可能
- 当日からすぐに歩ける
- 仕事は翌日から可能
- 入浴は2日後から
- 手術後一ヶ月以上の弾性ストッキングの着用を推奨
硬化療法は比較的簡単な治療となるため、金銭的にも、体力的にも大きな負担が必要ないことが特徴です。
4-2, ストリッピング手術
伏在静脈瘤と呼ばれる皮膚の奥にできた下肢静脈瘤の手術に用いられている手術方法です。
熱を使わないことが特徴で、発病している静脈にワイヤーを通して静脈瘤血管を引き抜く手術です。多くは半身麻酔または全身麻酔が必要となり、傷も多く残り入院が必要になります。手術後の痛みは強く、皮下出血などを伴うことがあります。
- ストリッピング手術のメリット
・熱を使わない。
・皮膚から比較的浅い静脈の手術にも適用ができる。
- ストリッピング手術のデメリット
・十分な麻酔が必要。(過去のストリッピング手術では入院が基本だった)
・切り傷が多くできる。
・手術後のしびれや、皮下出血が多い。
この画像はストリッピング手術から7日が経ち、大きく皮下出血の後遺症が見られたケースです。ひどいケースではこのような後遺症が残る可能性もあります。(*全てのストリッピング手術で後遺症が発生するわけではなく、症状によって異なります。)
4-2-1, ストリッピング手術の手術費用や詳細
- 治療費用:約40,000円(3割負担の自己負担額)
- 麻酔は十分に必要なため、半身麻酔や全身麻酔のケースもあり
- 日帰り可能
- 当日からすぐに歩ける
- 仕事は翌日から可能
- 入浴は翌日の夜から可能
- 手術後一ヶ月以上の弾性ストッキングの着用を推奨
4-3, 血管内焼灼術
血管内焼灼術とは、発病している静脈に細い管を入れて、内側からレーザーやラジオ波の熱で焼き潰す手術です。
ストリッピング手術よりも傷が少なく、手術後の後遺症も少ないと一般的には言われています。
- 血管内焼灼術のメリット
・針を刺すだけなので、傷ができない。
・選ぶレーザーの種類によっては、手術後の痛みや、皮下出血が少ない。
- 血管内焼灼術のデメリット
・皮膚から浅い静脈には適さない。
・使用するレーザーの種類によっては血栓ができやすく、エコノミークラス症候群の危険性が高まる。
・熱を使う。
(保険適用レーザーの実験でできた血栓)
4-3-2, 血管内焼灼術はどんな下肢静脈瘤の治療に適切か
側枝静脈瘤と伏在静脈瘤の治療として用いられることが多い血管内焼灼術ですが、下記下記の4パターンが当てはまる場合にもっとも多く選択されます。
- 足の付け根の静脈弁が壊れている
- 太もも内側の静脈全体に逆流がある
- 静脈の太さが4 mm以上ある
- 不全交通枝が太ももにある
4-3-2, 血管内焼灼術の手術費用や詳細
- 治療費用:約50,000円(3割負担の自己負担額)*レーザーの種類により大きく異なる。
- 麻酔は十分に必要
- 日帰り可能
- 当日からすぐに歩ける
- 仕事は翌日から可能
- 入浴は翌日の夜から可能
- 手術後一ヶ月以上の弾性ストッキングの着用を推奨
4-3-3, 血管内焼灼術はレーザーの種類に要注意!
レーザーやラジオ波で血管を焼き潰す治療ですが、どんなレーザーとラジオ波を使用するかによって費用や、術後の後遺症に大きな差ができます。
- 保険適用可能レーザー(980nm)で手術後の皮下出血事例
このように保険適用可能レーザーの場合、手術費用は抑えられますが、術後の後遺症に悩まされるケースも散見しています。(*全ての保険適用可能レーザーでの手術で後遺症が発生するわけではありません。)
そのため、マイクロパルス波レーザー治療のような、自由診療での治療となる最新型のレーザーを用いた手術を受けられる方も増えています。
●マイクロパルス波レーザー治療とは?
点滅するようにレーザーを照射する世界最先端レーザー治療。多くの素晴らしい実績を上げています。
- 焦げない。
- 痛くない。
- 皮膚が紫にならない。
- 血栓ができない。
- 成功率99%(10年)
このような非常に大きなメリットを持ち合わせる手術方法です。
治療の問い合わせは<東京血管外科クリニック>まで。
4-4, 大注目!スーパーグルー治療
症状が重い場合には、ストリッピング手術か血管内焼灼術という選択肢を開設してきましたが、最後に近年大注目の「スーパーグルー治療」について開設をします。
スーパーグルー治療とは熱を使わず、瞬間接着剤(スーパーグルー)を用いて、問題のある血管を瞬時に塞いでしまう治療方法です。
熱を使わないため、手術後に血管火傷の後遺症が残ることや、針を刺すことによる皮下出血の心配も限りなく0に近く、麻酔もほとんど必要なく、その手術時間はなんと驚きの20秒!
下肢静脈瘤治療の救世主として各メディアからも注目を集めています。
●スーパーグルー治療のメリット
- 熱を使わないため血栓ができない。
- 傷がほとんど残らない。
- 麻酔がほとんどいらない。
- 手術時間がもっとも短い(約20秒)
- 浅い静脈でも治療可能
- 弾性ストッキングが必要ない。
- いち早く飛行機にも乗れるため、ビジネスマンや海外からの患者さんも無理なく手術を受けられる。
●スーパーグルー治療のデメリット
- グルーのアレルギーがあると手術ができない。
(アロンアルファを肌に落としてアレルギー反応が出なければ問題ありません。)
4-4-1, スーパーグルー治療の手術詳細
- 麻酔はほとんど必要ない
- 日帰り可能(治療時間20秒)
- 当日からすぐに歩ける
- 仕事もすぐに可能
- 入浴は翌日の夜から可能
- 弾性ストッキングの着用は必要ない
スーパーグルーについてももっと知りたい方は <最先端スーパーグルー治療!実際に手術を受けた10人の感想!>
4-4-3, スーパーグルー治療はどこで受けられるの?
日本、そしてアジアで唯一スーパーグルー治療を受けられるのは東京都文京区にある「東京血管外科クリニック」です。
2017年1月現在、スーパーグルー治療を受けられるのは国内でこのクリニックしかないようです。
最近では下肢静脈瘤に悩む海外からの患者の受け入れも行い、スーパーグルー治療を数多く施術しています。
<東京血管外科クリニック>
住所: 東京都文京区後楽1-1-1 TKセントラルビル2階
電話番号: 03-3556-4103 0120-98-1313
診療時間: 午前10時~午後1時・午後3時~午後7時(休診日・木曜・日曜)
診療科目: 心臓血管外科 外科 皮ふ科 形成外科 内科
<公式サイトはこちら>
5, あなたの要望に合った手術の選び方
ここまでは色々な治療方法と手術方法をご紹介してきました。
種類が多くて、何を選べばいいのかわからない、私は痛みが出ないのがいいな、治療費を安く抑えられるのがいいな、などなど読者の皆さまのニーズに合わせてどの治療法がいいのかをご案内します。
5-1, 痛みを避けたい
痛みを避けることを優先にするのであれば、
第一選択肢:スーパーグルー 第二選択肢:最新レーザー 第三選択肢:ラジオ波
5-2, 皮下出血を避けたい
皮下出血を避けることを最優先に考えるのであれば、
第一選択肢:スーパーグルー 第二選択肢:最新レーザー 第三選択肢:ラジオ波
5-3, 血栓が怖い(エコノミークラス症候群が怖い)
エコノミークラス症候群を誘発する血栓が怖い方も上記と同じく、
第一選択肢:スーパーグルー 第二選択肢:最新レーザー 第三選択肢:ラジオ波
5-4, 弾性ストッキングが履けない
弾性ストッキングが履けない場合には、スーパーグルー治療の一択です。
5-5, 静脈が太い(15mm以上)
静脈が太めな場合に選択肢になるのは、
第一選択肢:スーパーグルー 第二選択肢:最新レーザー 第三選択肢:ストリッピング手術
5-6, 静脈が皮膚に近い(5mm以下)
対象の静脈が皮膚に近い場合には、
第一選択肢:ストリッピング手術 第二選択肢:スーパーグルー 第三選択肢:硬化療法
5-7, 静脈の蛇行が強い
静脈が強く蛇行をしている場合には、
第一選択肢:ストリッピング手術 第二選択肢:硬化療法 第三選択肢:最新レーザー
5-8, 手術費用を重視したい
かかる費用が気になる方は、
第一選択肢:ストリッピング手術 第二選択肢:ラジオ波 第三選択肢:最新レーザー
5-9, 要望と手術方法のまとめ
上記の要望別、治療方法選択肢をまとめると下記の表のようになります。
要望 | 第一選択肢 | 第二選択肢 | 第三選択肢 |
痛みを避けたい | スーパーグルー | 最新レーザー | ラジオ波 |
皮下出血を避けたい | スーパーグルー | 最新レーザー | ラジオ波 |
血栓が強い | スーパーグルー | 最新レーザー | ラジオ波 |
弾性ストッキングが履けない | スーパーグルー | ー | ー |
静脈が太い | スーパーグルー | 最新レーザー | ストリッピング |
静脈が皮膚に近い | ストリッピング | スーパーグルー | 硬化療法 |
蛇行が強い | ストリッピング | 硬化療法 | 最新レーザー |
費用を重視 | ストリッピング | ラジオ波 | 最新レーザー |
6, まとめ
いかがでしたでしょうか?
下肢静脈瘤の手術、治療にはまず適切な方法を選択することが第一です。
不安があればお医者さんへの相談を忘れずに、あなたにとってベストな選択肢を選べるようにしてくださいね。