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下肢静脈瘤の原因と予防について【専門医監修で徹底解剖】

下肢静脈瘤の仕組み

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足のむくみが気になってきたら下肢静脈瘤のサインかも?
日本人の1,000万人が予備軍と言われている、脚の病気「下肢静脈瘤」
どんな病気で、原因はどこにあるのかしっかりと理解をすることで、予防や治療にお役立てください。

下肢静脈瘤の専門医監修の元で2017年5月に改訂版として記事を再UPしました。

目次

1, 下肢静脈瘤とは?

脚(足)にボコボコとした膨らみができる病気が下肢静脈瘤です。この病気は古代エジプトの文献に書かれた「下肢にできるヘビみたいな膨張物」に始まるといわれています。心臓からポンプのように下肢へ送られた血液は、静脈を通って心臓に戻っていきます。その際に大きな役割を果たす静脈弁がうまく閉じることができずに足先に向かって血液が落ちていくことから始まります。当然、上に向かっていく血液と衝突するため横方向に血液が逃げ、それが静脈の壁に強く当たり壁が瘤のように膨らむのです。放っておけば重症化するケースもある下肢静脈瘤。その原因を探っていきます。

下肢静脈瘤イメージ

2, 下肢静脈瘤かどうかの見分け方

下肢静脈瘤のサインはむくみに見られます。
では、むくみが気になれば下肢静脈瘤なのか?いえいえ、そういうわけでもありません。

むくみの種類や場所によって、むくみの原因は異なります。

2-1, 【検証1】むくみは全身性か局所性か

全身にむくみが出ているでしょうか?それとも下肢部のみに局所的に出ているでしょうか?

下肢静脈瘤はその名の通り下肢部に局所的にむくみが発生するため、全身に出ている場合には肝臓病、心不全、肝硬変、ホルモンバランスの崩れ、過剰な水分摂取などが考えられます。下肢部に局所的にむくみが発生している場合には下肢静脈瘤や、炎症性のむくみなどの可能性があります。

2-2, 【検証2】押すとへこむむくみか、へこまないむくみか

むくみ部分を押した時に、へこむタイプのむくみでしょうか?それともへこまないタイプのむくみでしょうか?
へこむむくみであることが下肢静脈瘤の特徴です。一方でへこまないタイプのむくみの場合には甲状腺機能低下症やリンパ浮腫などが考えられます。

特徴 全身性 局所性
へこむ
肝臓病、薬剤性心不全、肝硬変
女性ホルモン、過剰水分、栄養障害
下肢静脈瘤
血栓症
大静脈症候群
炎症性
へこまない
甲状腺機能低下症 リンパ浮腫

 

まとめると、「下肢部に局所的で」かつ、「へこむむくみ」の場合、下肢静脈瘤の可能性があります。下肢静脈瘤でない場合でも病気が隠れてる可能性もありますので一度病院で相談されることをおすすめします。

次章ではその種類について解説をしていきます。

3, 下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤にも種類があり、皮膚からの深さと症状の進行度合いによって、「クモの巣静脈瘤」、「網目静脈瘤」、「側枝静脈瘤」、「伏在静脈瘤」の4つに分類されます。それぞれに特徴があり、種類によっては治療が必要なもの、そうでないものがあります。

下肢静脈瘤場所

3-1, クモの巣静脈瘤

皮膚から浅いところにでき、むくみの症状は出ず、基本的には健康被害もありません。

クモの巣のように細く血管が浮き出ることが特徴です。健康被害がない静脈瘤になるため治療の必要はありませんが、皮膚に血管が浮き出るため美容を損なうという観点から、治療を希望される方もいらっしゃいます。

クモの巣静脈瘤の症例画像


3-2, 網目静脈瘤

こちらも皮膚から浅いところにでき、むくみの症状は出ず、基本的には健康被害もありません。

網目のように血管が浮き出ることが特徴です。治療をする場合には、健康被害を改善するため、というよりは美容面に配慮しての治療となるケースが一般的です。

網目静脈瘤の症例画像

 

3-3, 側枝静脈瘤

前述の2つと異なり、皮膚から深いところにある「側枝静脈」に瘤ができる状態です。
ボコボコと大きなコブができるのが特徴です。むくみの症状があり、健康被害も発生するので、治療の対象となります。

 

側枝静脈瘤の症例画像

 

3-4, 伏在静脈瘤

こちらも皮膚から深いところにある「伏在静脈」に瘤ができる状態です。
大きなコブとなるむくみがみられます。むくみの症状があり、健康被害も発生するので、治療の対象となります。

 

伏在静脈瘤の症例画像

 

4, 下肢静脈瘤になりやすい3つの条件

3章では下肢静脈瘤かな?と思った時の見分け方を紹介しましたが、実はこの病気はなりやすい人、なりにくい人がいるんです。下記の3つの条件に当てはまる人は、5章の下肢静脈瘤の原因と合わせてしっかり対策をとるようにしてくださいね。

4-1, 長時間に及ぶ立ち仕事、座り仕事

長時間同じ体勢が続く場合、静脈の流れを滞らせることに繋がるため、下肢静脈瘤の大きな原因となります。

4-2, 女性

女性は補正下着や妊娠などで心臓へ向かう下大静脈を圧迫し、静脈血流の邪魔をします。その影響が脚の付け根の血液停滞を引き起こして下肢の静脈圧が上昇します。特に出産時は力みにより過剰な静脈圧が発生するため静脈弁が容易に壊れてしまいます。

有名な雑誌モデルである滝沢眞規子さんもご出産のあと、下肢静脈瘤に悩まれたらしく…
その経験をブログでも公開されています。

 

4-3, 遺伝

両親に下肢静脈瘤がある場合に、子供へは90%遺伝すると言われています。また女性への遺伝は男性への2.5倍というデータもあります。遺伝は非常に大きな原因になりますので、ご両親に発症をした方がいないか聞いてみてください。

 

5, 下肢静脈瘤になる原因

端的に、血流が下肢静脈でよどんでしまい静脈の血圧が上昇することが原因です。

例えるなら道路が渋滞する様子を想像してみてください。交通量の多い坂道の道路では信号の数が多かったり道幅が急に狭くなると車はノロノロ運転になります。この信号に当たるのが「静脈弁」です。静脈弁は重力で下に落ちようとする血液を支えて心臓方向に血液を流し逆流を防止する役割があります。その静脈弁が壊れると心臓方向に上がった血液がまた下に落ちてきて前に進めず交通渋滞が起きているような状況になります。この状態が続くと下肢静脈瘤と呼ばれるコブができます。これが下肢静脈瘤を発症する原因のメカニズムです。

ではなぜ、静脈弁に不具合が起きてしまうのかその原因について説明をしていきたいと思います。

 

5-1, 静脈弁の外的な損傷

外傷を受けて、弁が直接的に破壊をされることで下肢静脈瘤が発生する状態です。

5-2, 下半身の静脈圧上昇

下肢部の静脈圧が上昇することを原因とした下肢静脈瘤の発生パターンです。
主に下記4点が挙げられます。

  • 歩行や運動不足
  • 妊娠、出産、肥満などに伴う静脈の外からの圧迫
  • 血栓症などによる静脈内の閉塞、狭窄
  • 心臓弁膜症などに伴う、心臓の汲み上げ機能低下

5-3, 静脈拡大による弁接合不全

腎不全、心不全、妊娠に伴う、全身の血液量増加が原因となり下肢静脈瘤が発症するパターンです。

6, 自分でもすぐにできる下肢静脈瘤の予防法

初期症状の場合、自宅でできる簡単なケアや、適切な弾性ストッキングを履くことで症状を改善、予防することができます。

6-1, 足を心臓よりも高くする(重力利用法)

足を心臓よりも高くすることで、重力を利用して足の血液を心臓に戻す方法です。

●ゴキブリ体操:仰向けの状態で手足を伸ばしバタつかせることで血液の流れに重力を利用します。

●足はさみ体操:仰向けの状態から腰を手で持ち上げ足を高く伸ばし、前後に動かします。

6-2, 足の筋肉運動を利用する(ポンプ法)

骨格筋ポンプで足から血液を駆逐する方法です。
筋肉が緩んでいる時と、筋肉がしまっている時を比較すると、筋肉がしまっている時にはポンプ作用が働くことで静脈弁が閉じる効果があります。

●ふくらはぎポンプ法:ふくらはぎの筋肉が静脈を揉んで血液を心臓へ送ります。

●足ポンプ法:足の甲の筋肉を動かすことで、足先からの血流を改善します。

 

6-3, 弾性ストッキングを履く

弾性ストッキングの最大の特徴は、足首の部分がもっとも圧迫圧が高く、上方にいくにしたがって圧迫圧が低くなるように編みこまれていることです。足首から段階的に圧迫することにより、足の静脈の血液が下から上に流れやすくなるため、下肢静脈瘤の原因となる血流の停滞を軽減する効果があります。下肢静脈瘤の場合には医療用弾性ストッキングがオススメです。

<医療用から一般用まで!おすすめ弾性ストッキング12選!>におすすめの商品を紹介しています。

7, 治療や通院を選ぶ際のポイント

前章では自宅でも簡単にできる予防法をお伝えしましたが、症状の進行具合が悪く「側枝静脈瘤」や「伏在静脈瘤」になったしまった場合や、自分の症状の場合に病院での治療が必要なのか分からなくて不安な方は、まず診察を受けることをお勧めします。この章では診察の手順や、どういった場合に、どんな治療が必要になるのかを詳しく解説していきます。

7-1, まず最初はエコー検査

下肢部へのエコー検査を用いて異常のあるなしを検査します。

ここで異常がある場合には下肢静脈瘤の治療へと移ります。一方で、異常がない場合でもむくみがある場合には心臓、肝臓、腎臓系に異常がある場合がありますので、併せてそちらの検査も必要になります。

7-2, 治療が必要な下肢静脈瘤の種類

3章でまとめたように下肢静脈瘤であっても治療が必要なものとそうでないものがあります。

  • クモの巣静脈瘤→放置、弾性ストッキング、硬化療法のいずれかを選択することが多い。
  • 網目静脈瘤→弾性ストッキング、硬化療法のどちらかを選択することが多い。

上記二種類は病気を治す、というよりは血管が浮き出るのを美容面で改善する、というアプローチが主になります。

  • 側枝静脈瘤、伏在静脈瘤→血管内焼灼術、レーザー治療、スーパーグルー治療などいわゆる手術が選択されることが多い。

この二種類に関しては重症化をしてきているため、適切な治療法(手術)を選び、実行します。

7-3, 手術をしない硬化療法って何?

軽度の下肢静脈瘤の治療で用いられる硬化療法とは、注射で硬化剤を直接静脈の中に注入する方法です。

硬化剤は静脈の中で炎症を起こして内部をのりのようにくっつけてつぶします。その血管には血液が流れなくなるので次第に静脈瘤も無くなります。細い針を使うので傷はほとんどわからないのですが、複数回の治療が必要なケースが多く、また炎症後の色素沈着や再発を起こしやすいので、医療機関からの説明をよく受けるようにしてください。

7-4, ストリッピング手術とは?

ストリピッピング手術とは逆流を起こしている血管を取り去ってしまい、それより下にある静脈の淀みをなくすという手術方法です。静脈が一本なくなっても大丈夫なの?と不安に思われる方もいらっしゃいますが、下肢の表在静脈にはたくさんの迂回路となる静脈がありますので血管が一本なくなっても平気なのです。近年ではだいぶ改善をされましたが、術後に残る痛みや青あざに悩まされるケースが多いことがデメリットとなっています。


7-5,
血管内焼灼術

ストリッピング手術の欠点を補うような形で新たに登場したのが血管の内側から行う血管内焼灼術です。血管内焼灼術には近赤外線レーザーによる治療とラジオ波による治療があり、どちらも血管内で静脈を熱で焼き潰す治療のためストリッピング手術のような傷跡や痛みが少なく日帰りでの手術も可能となりました。一方で、選ぶレーザーの種類によっては血栓ができやすく、その後エコノミークラス症候群が発病しやすくなるなどのデメリットも存在します。


7-6,
大注目!スーパーグルー治療

数ある下肢静脈瘤の治療方法の中で近年最も注目を浴びているのが「スーパーグルー治療」です。

熱を使い焼く、という従来の治療法とは全く異なり瞬間接着剤(スーパーグルー)を用いた治療です。安全性の高い特別なグルー(ポリマー)を用いることで、問題のある血管を瞬時に塞ぐことが可能になっているため、非常に理想的な治療方法と言えます。熱を使わないため、治療後に血管火傷の違和感が残ることや、針を刺すことによる皮下出血の心配も限りなく0に近く、麻酔もほとんど必要なく、その手術時間はなんと20秒!下肢静脈瘤治療の救世主と言えます。

スーパーグルーについてももっと知りたい方は <大注目のスーパーグルー治療!下肢静脈瘤の救世主を探る!>



保険の適用有無や症状によって、適切な治療方法が異なりますので、治療方法についてさらに詳しく解説したこちらの記事も合わせてご覧下さい。<【詳しく解説】あなたの下肢静脈瘤にあった手術方法はどれ?>


8, まとめ

下肢静脈瘤の原因や、その改善策と予防法についてお伝えしました。
日本人の10人に1人が発症の疑いがあると言われている下肢静脈瘤。原因をしっかりと学んで、適切な対策をとるようにしてくださいね。

 

 

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