年齢を重ねるとともに、肌のツヤや乾燥など、体の皮膚に表れる老いはついつい気になるものですが、それ以上に老けて見えてしまうもの、それは浮き出た血管です。
特に首や手の甲、ふくらはぎなど、体の一部の血管がボコボコと浮き出て見えるのが気になる方もいらっしゃるでしょう。
最近では、「血管年齢」など、血管の健康についての話題がメディアで取り上げられることも多くなってきました。この記事では血管が浮き出る原因に関して解説をしていきます。
目次
1, 何故、血管が浮き出るのか?9つの原因
体中の表面を覆い巡っている「血管」。
(一番本数が多い毛細血管は、長さ10万㎞(地球二周半)、本数にして1500億本に及ぶそうです。)
実は、血管が浮き出る原因は1つではないということを皆さん知っていましたか?
中には、実は病気の危険信号であることも。
病気でない場合は、美容面等の理由で気にしなければ、特に問題は無いのですが、病気の症状の表れだとしたら、放置しておくと大変なことに。
ここでは体の部位と原因別に血管が浮き出る問題点と対処法について解説していきます。
1-1.加齢・血管の老化
特に手の甲や足の甲など、皮膚が乾燥しやすい箇所に多いのが、肌の加齢と血管の老化による血管の浮き出しです。まず、加齢によるものですが、
肌のヒアルロン酸の量は生まれたての時が最も多く、年とともに減少し、20歳を過ぎると生まれた時の約半分になっているといわれています。同様に、20代後半から肌の内側にあるエラスチン(主成分はコラーゲン)も減少していきます。
女性の場合は女性ホルモンの影響も重なり、20-30代をピークにコラーゲンの分泌量が低下することも影響しています。その結果、ハリが失われ、皮膚自体が薄くなって、血管が浮き出てくるようになります。肌の表面がこのような状態だと更なる乾燥を招き、肌の老化が加速していくので要注意ですね。
また、血管の老化も原因の一つです。
加齢と共に血管の壁が硬く、太くなり、柔軟性が失われてくると、血流が弱くなります。
その結果、血液が滞留して血管が浮き出る原因になります。
1-2.紫外線
紫外線を長年、浴び続けるメラニンが生成され、肌自体の新陳代謝を遅らせてしまうことに。
肌のターンオーバーが遅くなると、皮膚が衰え、その結果表皮が薄くなっていきます。
これにより血管が浮き出て見えるようになってくるのです。
特に手や腕は紫外線を浴びやすい場所でもあります。
紫外線は、シミやたるみにも影響が出ますが、実は皮膚が薄くなる原因にもなっているんですね。
1-3.運動不足による血行不良
静脈の血流は、生活習慣によっても変化していきます。
血管と同様に体中に張り巡らされているのが筋肉ですが、例えば物を手に取ったり、ウォーキングをしたりといった軽い運動の場合でも筋肉を使うことで体を動かしています。
当たり前のような話ではありますが、筋肉が動くことで、血管にも刺激が与えられ、血の流れも良くなります。
逆に言えば、体を動かさず、同じ姿勢のままでいることが多い方は、血流が停滞し、血管も浮き出やすくなってしまいます。血行不良になると、冷えを招いたり、血管が弱くなる原因にもなりますので、特に同じ姿勢が続きやすいデスクワークなどの人は、例えばオフィスで階段を使ったり、歩いて帰ってみるなどの工夫を心がけましょう。
1-4.皮下脂肪が少ない
若い方や、適度な運動をされている方でも血管が目立つ方もいらっしゃいます。
これは、表皮の内側、皮下脂肪の厚さが関係してきています。
「手には年齢が出る」と言いますが、元々、手の甲は皮下脂肪が少ない場所です。
生活環境や個人差もありますが、他にも、ふくらはぎ、顔、腕、肩などは皮下脂肪が少ない箇所と言われています。
更に、痩せ型の人は特に皮下脂肪が少ない傾向にあります。
また、女性よりも男性の方が、皮下脂肪が少ない傾向にあります。
表皮と血管の距離が近いため、静脈が浮き出やすくなるのはこう言った原因が挙げられます。
1-5.筋肉が発達している
血行不良とは逆に血流が多い方で血管の伸縮が柔軟な方も血管が浮き出ることがあります。
運動量が多い人がこれに当たり、特に腕、二の腕によく見られます。スポーツ選手は良い例で、酸素の消費量が普通の人よりも圧倒的に多くなります。
酸素を運ぶのは赤血球のヘモグロビンなので、スポーツ選手は一般の方よりも血液量が多い、ということになります。
それに耐えられるだけの酸素を確保するには肺を大きくして血液量を増やして供給するしかありません。スポーツ選手でなくても運動後は血行が促進されていますから、血流も良くなり、筋肉量が増えると血管も太くなるため、血管が浮き出やすい状態にあると言えます。
1-6.遺伝
加齢、皮下脂肪の厚さ、運動量以外にも実は、遺伝が原因の場合もあります。
血縁者に血管が浮き出ている人が多い場合、また祖母や母親が若い頃から血管が浮き出ていたなど、この様な場合は、家系的な遺伝である可能性が高いです。遺伝の場合は残念ながら、どうしようもありませんが、上に挙げたような皮膚の乾燥や紫外線、血行不良による更なる見た目への影響は防ぐことが大切です。
1-7.血管の太さ
首・手首・脚の付け根・上腕の内側など、体中には血管が太い部位があります。
血液を心臓から運ぶ動脈は体の内部にあるため、外見から見える太い血管のほとんどは静脈です。
また、血管の太さは生まれつきもあります
こう言った太い血管の場合は、自然と表皮に浮き出て見える箇所になります。
1-8.肝硬変や心臓疾患
ここまでは病気ではない原因について挙げてきましたが、実は血管のボコボコは、病気の症状のサインになることもあります。
その一つが肝硬変です。
肝硬変は、肝臓の一部が硬くなり機能しなくなる病気です。お腹の血管が浮き出る場合は要注意です。
肝硬変が進行すると、肝臓内の血液が流れにくくなり、正常に流れなかった一部の血液が滞留してしまうことがあります。おへその周りの血管が拡張し、放射状に血管が浮き出るような症状があれば、「メデューサの頭」と言われ、肝硬変の疑いがありますので、血液検査など、すぐ病院へご相談ください。
また、他にも高血圧や狭心症などの心臓疾患により、静脈の圧力が高まるために血管が浮き出るケースもあります。心配な方は心臓血管外科などの医療機関への受診をお勧めいたします。
1-9.静脈瘤
静脈瘤とは、心臓から動脈が体中に運んだ血液を戻す、静脈の何らかの問題により、血液中に渦が出来、瘤ができたものになります。
血液を心臓に戻す血管は「静脈」ですが、下半身の場合、下から上(心臓)に向かって血液が流れています。静脈内には、重力に従い逆流しようとする血液が落ちてしまうのを防止するため、弁が各所に取り付けられています。特に膝より下の足の場合、この静脈弁が故障し、うまく閉じることができずに、心臓へ血液を送り返すことができなくなると、足先に戻ってしまいます。
すると、足先に戻ってしまう血液と上に向かって流れてくる血液と衝突が起きることで、血液が滞留し、血液の壁の中で「瘤(こぶ)」ができてしまいます。これが静脈瘤です。
酷くなると皮膚が黒ずんでくる症状へと進行します。
蜘蛛の巣状の浮き出た血管や、膝の裏あたりのボコボコが気になる方は、初期症状のサインかもしれません。一度、医療機関で検査をしてみてください。
2, 部位によっては病気の危険信号かも!部位別の主な原因
体の中で血管が浮き出やすい場所として、腕、手の甲、足のふくらはぎなどが挙げられます。
ここでは、浮き出る部位別に、健康に問題がないか原因をご紹介していきます。
2-1.腕に出る場合
腕は体の中でも皮膚が薄く、血管が浮き出て見えやすい場所になります。もちろんダイエットや生まれつき痩せ型の方の場合、皮下脂肪が少なくなり、更に青い血管が見えやすくなりますが、血管が浮き出て見えることで身体への影響は特にありませんので、過度の心配は不要です。
また、二の腕などは、筋肉質の男性の場合、魅力的に見える女性もいらっしゃるかと思います。
脈は、筋肉よりも表面に走っているため、筋肉量が増えると浮き出て見える原因となります。
2-2.手のひら・手の甲に出る場合(ハンドベイン)
手の血管が浮き出て目立つ状態のことを気にされる女性も多いのではないでしょうか。
老け手や「ハンドベイン」とも言い、手のひらは特に皮下脂肪が少ない場所であり、更に加齢による肌の衰えにより、目立つ傾向があります。
身体に重大な影響はありませんが、目に付く手元は自分でも気になりますし、日常生活で人から見られていないようで見られている場所でもあります。
若々しく保ちたい、どうしても気になるという方は、最近は手の付け根から指先まで気になる箇所別に手術で綺麗にすることができるようになりました。「ハンドベイン 手術」で調べていただくか、手術対応をされている血管外科に相談してみてください。
2-3.おでこに出る場合
前髪の生え際から額の端・こめかみにかけて血管が表れ、ピクピクと動く場合です。
大抵は青い筋、静脈で、「青筋が立つ」とも言われたりします。
人によっては定期的に出るような人も少なくないでしょう。頭部なので、心配になられる方もいらっしゃると思いますが、実は身体的にそれほど問題があることはありません。
主な原因としては、ストレスや緊張によって血液量が増えるといった心因性のもの、加齢による血流低下、またはおでこの皮膚そのものが薄い場合に分けることができます。
何れにしても心配になられる方が多いのですが、心因性の原因が大半ですので、うまくストレスを溜め込まないようにしましょう。
2-4.足に出る場合
脚の血管が浮き出る、むくむ、だるい、痛いなど、足の血管が気になる方は「下肢静脈瘤」の可能性があります。後ほど詳しく説明しますが、病気と気付かれにくい症状が多く、女性で長年悩まれている場合は要注意です。
3, 血管が浮き出る病気
手や腕、おでこの場合は血管が浮き出ても大抵の場合は、健康への被害はありません。しかし、「血管が浮き出る」部位によっては、病気の症状である可能性もあります。
3-1, 下肢静脈瘤
足の静脈の逆流防止弁が壊れて正常に機能しなくなることで血液の逆流が起こり、逆流した血液により血管が徐々に拡張され瘤(こぶ)のように膨らんでしまう状態になったものが下肢静脈瘤です。
外見上にも分かる症状ですが、むくみとして見逃されることも多い病気です。
推定患者数は1千万人ともいわれ、身近に起きやすい病気の一つです。
立ち仕事、出産、遺伝的要因によって発症の可能性が高まるため、特に40代以降の女性に多い特徴があります。
詳しくは、<【症例多数】抑えるべきは4つ!下肢静脈瘤を症状別に解説!>こちらをご参照ください。
3-2. 胃静脈瘤・食道静脈瘤
食道の粘膜を流れる静脈が瘤(こぶ)のように膨らみ、でこぼこになる状態です。
胃にもできることがあり,その場合は胃静脈瘤といいます。
何れにしても体内臓器の疾患の可能性がありますので、病院にて検査を行ってください。
3-3, 高血圧
高血圧だから必ずしも血管が浮き上がるというわけではありません。
一般的な血圧とは「動脈」の圧のことを言いますが、
高血圧によって、心臓疾患を患っていると、静脈の血圧が高くなり、血管が浮き出ることがあります。
4.予防方法と対処法について
ここまでは血管が浮き出る原因について解説してきました。
病気ではなくても、気になるという方には毎日の工夫で、自宅でもできる予防策があります。
各原因をおさらいしつつ、対処法についても知識を得て、ケアしていきましょう。
4-1.適度な運動による血行促進
血行不良が原因の場合は、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れましょう。
仕事などで、長時間立ちっぱなし、座りっぱなしの場合は、ふくらはぎの筋肉を動かすだけでも改善されます。時々つま先立ちや座ったままでもつま先とかかとをそれぞれ10回程度上げたり、手首や足首を回してあげたりすることも効果的です。
4-2.マッサージ
常にブランと下に下げている腕や手先の血流が気になる方は、重力に従って手先に溜まってしまった血液を心臓へと戻してあげるケアがあります。
例えば、入浴時、体を洗う時に指先からヒジに向かってマッサージをすると良いでしょう。
ただし、力強く圧迫をしようとはせず、撫でるようにゆっくりと行うように心がけてください
4-3, 保湿・乾燥・紫外線ケア
紫外線や乾燥については毎日のケアで防ぐことが出来ます。
例えば食器洗い時は、ゴム手袋をして行ったり、水仕事の後はハンドクリームを塗ったりという対策もオススメです。
最近では保湿目的での、食器洗い専用のゴム手袋なども販売されるようになりました。
また、皮膚の老化を促進する、紫外線の対策も重要です。日常生活の中でも紫外線の影響を受けやすい手や顔は日焼け止めクリームを塗る、もしくはUVカットの手袋をするなどで対策を心がけましょう。
4-4.睡眠時の姿勢の工夫
体の血液は一番低いところにある足に留まりやすいため、足から心臓への血流低下が問題の場合は寝るときの姿勢に気をつけてみましょう。
皆さんの中には、朝になったら足のむくみがなくなっていたという経験をお持ちかもしれません。
足を心臓の高さくらいに高くすると、静脈の血流はよくなり足のむくみや血流は解消されやすくなります。
4-5.便利な予防グッズ
血管の浮き出しが気になったり、むくみ、だるさなどの症状が続いたりする場合は、血管外科への受診をお勧めします。
もし、症状の原因が軽度の下肢静脈瘤や予備軍である場合は、状態に合わせて圧迫治療を行います。
圧迫治療とは、医療用弾性ストッキングで脚に圧をかける方法で、日常生活の中で行う方法です。
軽度の場合は症状の悪化を防ぐためにも用いられます。
従来では、これらのグッズは専門病院でしか購入が出来ませんでしたが、最近はインターネット通販でも購入ができるようになりました。
ただし、市販のソックスの中には、ただ圧が強いだけで、きつく締め付けるだけで余計に症状を悪化させる恐れがある商品も出回っています。
自分で購入する際は、壊れた静脈の動きを助ける段階圧設計でないものは避け、医療用商品やアフターフォローがしっかりしている商品を選ぶように注意しましょう。
また、これらのグッズは初期症状の改善のためのものなので、重症の場合は病院へ早めの受診をお勧めいたいたします。
5, まとめ
いかがでしたでしょうか。
血管が浮き出る原因は部位によっても、健康に影響がないものから病気のサインになるものまで、様々です。見た目だけの問題であれば、加齢による自然のものであったりと、そこまで神経質にならなくても安心です。
もしも病気の疑いがある場合は、必ず自己判断はせず、医療機関にて相談へ行くことをお勧めします。