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1.下肢静脈瘤は何科を受診すればいい?
TVで近年話題の下肢静脈瘤。
もし自分が下肢静脈瘤にかかってしまったら・・・。
どんなお医者さんに相談すればいいか、皆さんはご存知ですか?
下肢静脈瘤という病気は、日本人の約9%、約1,000万人以上の人が患者であると言われ、出産経験のある女性の2人に1人は発症すると言われる病気です。
これほど国内でも患者数が多い病気にも関わらず、実は下肢静脈瘤は病気という認識が薄く、また初期の段階では見た目は気になるものの辛さが軽度であったりなど、放置されやすい病気です。
しかも、他にも放置されやすい理由の大きな要因の一つに、下肢静脈瘤を何科で治療すればいいのか分からないということが挙げられます。
本記事では、いざという時、相談すべき受診科について、病気の種類から病院選びのポイントまで一挙解説いたします。
1-1.下肢静脈瘤の専門クリニック
下肢静脈瘤は足の内部の血管に起こる病気です。
診断と治療は、ホームページ等で確認して、専門病院へ行くことが重要です。
しかし、いざ、検索してみるといろんな診療科が出てきてしまい、迷われる方も多いのではないでしょうか。
下肢静脈瘤の診療科について検索してみると「血管外科」の案内も多く出てきますが、
よく間違いがちな例としては、血管外科を「静脈」の専門と思って、受診してしまうケースです。
実は、血管外科の専門は、「静脈」ではなく、「動脈」です。
冒頭にお伝えしたように、下肢静脈瘤は血液を心臓に戻す「静脈」の異常によって起こる病気なので、こちらでは適切な治療を受けることができない、ということも多いのです。
誤った医療機関にかかるのではなく、必ず、下肢静脈瘤の専門クリニックを探して診察を受けるようにしましょう。
ただし、一概に専門クリニックであれば、どこでも問題ないかというとそうではありません。
中には、治療の選択肢が少ない、専門の外科医が常勤していない等の医療機関もあるので注意が必要です。
下肢静脈瘤という病気の怖い問題の1つとして、実はこう言った「病院のたらい回し」が数多くの患者様で見受けられます。
もし、専門外の医師に相談をしてしまうと、時間の無駄になるだけでなく、いつまで経っても、ご自身の足の健康を取り戻すことは困難になります。
後ほど、医師選びのポイントについても詳しくお伝えいたしますので、参考にしていただき、正しい医療機関選択をしていきましょう。
1-2. 妊娠中の場合
実は女性の場合、静脈瘤は妊娠中に現れやすいトラブルの一つでもあります。
妊娠中は赤ちゃんへ栄養や酸素を届けるために、血液量が多くなり、血液が通りやすいように血管も拡張されます。
また、妊娠中気を過ぎ、子宮が大きくなってくるとその周辺の血管が圧迫され、下半身の静脈が滞って血液が心臓に戻りにくくなり、静脈瘤になりやすくなることが懸念されます。
そのような、妊娠中の下肢静脈瘤の場合も、下肢静脈瘤の専門クリニックへの受診で問題ありません。
ごく稀に産婦人科で下肢静脈瘤外来を設けているクリニックもありますが、全国のほとんどの産婦人科では下肢静脈瘤の診断はできません。
特に、男性医師の場合、出産後には治ると取り合ってくれないケースも多いそうです。
「担当の医師に相談をしたのに、適切な治療をしてもらえない・・・。」
そして、こう言った妊婦さん達は仕方がなく、泣く泣く助産婦さんを頼り、弾性ストッキングにたどり着くのですが、適切な医師の診断が無いままでは、早期に治るものも治りません。
女性の人生においての重要な機会に、これほど不幸なことはあってはならないことです。
このようなリスクを避けるためにも、一番初めにかかる際から、下肢静脈瘤の専門クリニックの受診を強くお勧めいたします。
1-3.外科・形成外科・皮膚科
一般外科、形成外科、皮膚科でも下肢静脈瘤の診察をしている、とPRしている病院もあります。
何れにしても専門医が常勤していないために、適切な診断ができないことも多いだけでなく、そもそも専門の治療施設ではないため、治療法の選択肢が少ないというデメリットが挙げられます。
ホームページ上で、下肢静脈瘤の診察をうたっている場合でも、こう言った外科・形成外科・皮膚科での受診はせず、必ず、下肢静脈瘤の専門のクリニックを受診するように注意してください。
2.下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤と診断された場合にも、症状によって様々な種類があります。
その種類を知ることは、治療に非常に役立ちますので自分の症状がどの対応なのかしっかり見極めてくださいね。
2-1, 伏在静脈瘤
伏在静脈瘤とは健康被害の出る静脈瘤ですので、手術などの治療が選択肢になります。
伏在静脈瘤は、大きな瘤が蛇行して広範囲に渡って出てくることが特徴です。
2-2, 側枝静脈瘤
側枝静脈瘤も、健康被害があるため、手術や治療が必要となります。
側枝静脈にボコボコと大きな瘤が表面に出てくるのが特徴です。
2-3, 網目状静脈瘤
網目静脈瘤は基本的には健康被害はありませんが、治療方法としては硬化療法が取られます。
そのままにしておいても問題はありませんが、血管が肌に浮き出てきてしまうため、美容上の理由から治療をされる方もいらっしゃいます。
2-4, クモの巣状静脈瘤
最後はクモの巣静脈瘤です。
こちらも健康被害はありませんので、治療を選択する理由としては美容上の理由が大きいです。
一方で、クモの巣静脈瘤はその先に大きな静脈瘤が潜んでいるかもしれないサインでもありますので、欧米ではスパイダーベインと呼ばれ、恐れられています。
それぞれ特徴的な瘤の出方がありますので、
それは<【症例多数】抑えるべきは4つ!下肢静脈瘤を症状別に解説!>で症例の画像付きで紹介しております。
3.下肢静脈瘤と間違えやすい病気
下肢静脈瘤と間違えやすい症状が起こる疾患には次のようなものがあります。
・椎間板ヘルニア
・腰椎椎間板ヘルニア
・脊柱管狭窄症
両足に症状が出たり、下半身の広範囲で痛み・痺れの症状が出たりする場合は、このような病気の疑いがあります。
その場合は、血管ではなく、神経に問題がある病気となりますので、整形外科などの専門医の受診をお勧めいたします。
また、狭い空間に同じ体制が続く場合に起こる、エコノミークラス症候群(静脈血栓寒栓症)もよく似た症状の病気です。
最近では、エコノミークラス症候群を予防する靴下も出てきました。
長期のフライトが続く方はこういったグッズを利用するのも良いでしょう。
4.専門医を選ぶポイント
下肢静脈瘤の専門クリニックだからと言って、どの医療機関や、どんな医師でも安心なのでしょうか?
下肢静脈瘤は様々な原因や症状のステージ、血管の太さによっても治療方法が変わってきます。
また、手術には至らない保存治療で済む場合もあります。
最新のレーザー機器が備わっているか、血管外科医が勤務しているか、また保険適応の手術だけでなく、最新の治療方法などとの選択肢があるか、治療前に注意が必要です。
特に、術後の後遺症の可能性が高い手術もあります。
セカンドオピニオン制度や、ポジティブな情報だけでなく、ネガティブなリスクも伝えてくれる医療機関か診察の際にチェックしてみてください。
具体的な医療機関について知りたい方は、
>【ドクター推薦】下肢静脈瘤の専門病院 10選!特徴まとめ<
こちらをご参照ください。
5.下肢静脈瘤の検査
実際に病院へ受診した際、下肢静脈瘤の検査の流れ、治療が選択されるとしたら、どういう過程をたどるのでしょうか。
診断のパターンに分けてご説明します。
5-1, エコー診察
まずはエコー診察です。
足の表面にむくみが出ていてもそれが下肢静脈瘤かどうかはわかりません。
そのためまずはエコー診察をし、血液の逆流が起きているのかどうかを調べます。
5-2, 下肢静脈瘤だった場合
エコー診察の結果、下肢静脈瘤だった場合であってもすぐに治療というわけではありません。
下肢静脈瘤のタイプによっては、治療が必要ないものもありますので、そこはお医者さんと相談です。
5-3, 下肢静脈瘤ではなかった場合
エコー診察の結果、下肢静脈瘤でなかったケースも多々あります。
その場合には他のむくみ、瘤の原因がありますので、ここからは別の病気の治療となります。
5-4, いざ治療(手術)
治療(手術)を選択する場合もたくさんの種類があります。
治療方法の決め方は「静脈瘤の種類」×「患者様の要望」です。
従来型の保険的用治療方法から最先端の自由診療までいろいろな種類がありますので、
タイプとニーズにあったものを選ぶことが重要です。
手術方法の詳細はこちら
<【詳しく解説】あなたの下肢静脈瘤にあった手術方法はどれ?>
6.下肢静脈瘤の治療方法
6-1.弾性ストッキングの着用(圧迫療法)
伸縮性の強い医療用の弾性ストッキングを履くことで拡張した血管を圧迫して下肢に血液が溜まることを防ぐ方法。圧迫療法や保存療法と呼ばれています。
弾性ストッキングで足を圧迫することで静脈内の余分な血液は減り、深部静脈への流れは促進され、下肢全体の血液循環が改善され、だるさや足がつるなどの症状は緩和されます。
ただし、下肢静脈瘤の進行防止、現状維持が目的となり、この方法で下肢静脈瘤そのものが治るわけではありません。
手術ができない状態(妊娠中、仕事都合)のときや手術後早期にこの方法をとります。
6-2.注射による治療
硬化治療と呼ばれ、原因静脈に硬化剤を注入する治療です。
初期症状に用いられる治療で、重症の場合は手術が必要となります。
6-3.血管をしばる治療
高位結さつ術と呼ばれる治療で、弁不全のある静脈と深部の静脈の合流する部位を糸で縛って血液を流れなくするようにし、血液の逆流をくい止めるという手術方法です。
局所麻酔を使用して行われ、傷もストリッピング手術に比べ小さいものですが、入院が必要な場合があります。
高位結さつ術だけでは再発率が高いため、多くは硬化療法と併用されています。
6-4.血管を引き抜く治療
ストリッピング手術と呼ばれ、血管内にワイヤーを通して静脈瘤血管を引き抜いてしまう手術です。
半身麻酔または全身麻酔で行われ、入院が必要になります。
レーザー治療を用いない病院では主流の手術となり、あまり表立って知られてはいませんが、手術後は傷も多く残り、神経内部への後遺症を伴うリスクがあります。
6-5.血管を焼く治療
カテーテルを静脈内に入れ、高周波やレーザーを用いて焼く治療です。
6-6.血管を焼かない治療
スーパーグルー治療と呼ばれる最新治療で、安全性の高い特別なグルーを用いて治療対象の血管を瞬時に塞ぐ治療です。従来の手術と異なり、熱を用いないため、血栓が出来る可能性が圧倒的に低いため、注目を集めています。
また、術後の傷跡もほとんどなく、絆創膏1枚、術後30分ほどで帰宅が可能です。
7.まとめ
下肢静脈瘤にかかってしまったら、まずは最新の治療が備わっている専門クリニックを探しましょう。
また、手術が必要な場合も、最新のレーザーやスーパーグルー治療など、術後の生活を考えた治療法を選択できる病院かどうかの見極めが重要です。
せっかく、治療で良くなっても傷跡が残ってしまってはQOL(生活の質)の低下に繋がってしまいます。
以上のチェックポイントに気をつけ、泣き寝入りすることが無いよう、安心できる医療機関で診察を受けましょう。